『はらぺこあおむし』誕生秘話
1969年の誕生から50年、世界で4800万部のロングヒットをつづける『はらぺこあおむし』。その誕生にはどのような経緯があったのでしょう。





のち、もりひさし訳による日本語版が1976年に刊行。日本の子どもたちにもひろく親しまれるようになっていきます。

『はらぺこあおむし』の変化
1969年の誕生から50年、世界で4800万部のロングヒットをつづける『はらぺこあおむし』。その誕生にはどのような経緯があったのでしょう。

1 エリック・カールが最初に出版社に見せた見本。タイトルは『イモ虫ウィリーの一週間』だった。

2 現在の表紙。毛や足が生え、表情豊かな「あおむし」誕生!

3 現在の絵本にはないバナナのシーン。

4 エリック・カール作品の名キャラクター、黄色い太陽も登場している。

5 絵に穴をあけるという斬新な発想が、ストーリーをもつ「絵本」へと進化していく。

6 現在の絵本では、食べものの並び順やディテールが変更され、あおむしがお腹をこわすシーンが追加されたことがわかる。

エリック・カールの制作技法
『はらぺこあおむし』をはじめとするエリック・カール作品の多くは、コラージュと呼ばれる貼り絵の技法をつかって描かれています。

薄い独自の紙に色を塗る
カールさんがつかうのは、なんとティッシュペーパー。意外にも身近なものが使われていることに驚きますが、とはいえ日本で一般的に流通している柔らかい素材のものとはちがい、透け感のある薄紙といったほうが近いイメージです。カールさんはまず、これにアクリル絵の具で色を塗っていきます。

色を塗った紙を、下絵といっしょに形をくりぬく
複数の色を塗り重ねたり、模様を描いたり……。筆だけでなく指をつかったり、カーペットの切れ端やスポンジ、麻布などをスタンプのように押して表情を出すこともあります。カールさんの引き出しには、こうしてつくられた鮮やかな紙の切れ端がたくさんストックされています。それから、トレーシングペーパーに描いた下絵といっしょに、カミソリを使って形をくりぬきます。

コラージュで作品が作られていく
それを台紙となる画用紙の上にバランスを見ながら貼り、絵を描いていきます。

コラージュを完成させ、クレヨンなどで仕上げをする
そのあと、クレヨンや色鉛筆でタッチを加えますが(たとえばあおむしの毛やちょうちょの触覚など)、こうすることで、絵にぐっと表情が生まれます。最後に、サインを入れれば完成です。

エリック・カールプロフィール

1929年6月25日、アメリカニューヨーク州生まれ。少年期は家族とともに西ドイツで過ごし、シュトゥットガルトで絵を学ぶ。1952年、アメリカに戻り、グラフィックデザイナーとして働く。1967年、『くまさん くまさん なにみてるの?』(ビル・マーチン/文)で絵本作家デビュー。1969年の『はらぺこあおむし』以降、さまざまなしかけを施した作品を発表。また、舞台美術や立体作品など絵本以外の活動も行う。
2002年、マサチューセッツ州アマーストにアメリカ初の絵本専門美術館「エリック・カール絵本美術館」開館。2003年、ローラ・インガルス・ワイルダー賞受賞。
著書に『はらぺこあおむし』『パパ、お月さまとって!』『10このちいさな おもちゃのあひる』『えをかくかくかく』など多数。
